写真原板とは

写真原板とは、撮影時にカメラに装填されていた、写真画像のもととなる記録媒体(メディア)、つまり、写真フィルムやガラス乾板などを指します。写真原板は撮影の瞬間、その場で記録された最も直接的で唯一無二の記録であり、これらが無ければ写真プリントを作成することはできません。一般に写真と言うと、プリントや印刷物などを指しますが、プリントや印刷された写真は、撮影された厖大なコマから選ばれたごく少数のものであり、それらの作成には、タイトルづけやトリミングなど、意図を持った編集や操作が行われます。

もし写真原板が失われてしまったら、それらの操作が行われる以前の直接的な記録や、場合によっては事実の記録が失われることにもなります。何らかの理由でプリント、印刷されなかったコマにも、その写真が撮影された背景を物語る重要な情報が記録されています。また、写真原板には撮影者の意図した主たる被写体以外にも、レンズを通して捉えられた様々な映像が記録されています。たとえいつどこで写されたかわからない写真であっても、一本のフィルムの別のコマに写りこんだ人物やその服装や、街並み、自動車、映画ポスター等は、写された時代や場所を饒舌に物語ります。このように、写真原板を調査すると、周囲の状況や時間経過、写真家の興味の変化や視点の推移とそこからわかる撮影の意図も、よりくわしく理解できます。

そのため日本写真保存センターでは、後からの解釈や編集、選択が加えられたプリントや印刷物だけではなく、それらの元となる写真原板を保存する事こそが、撮影された写真画像を正確に後世に残すために必要であると考えました。