劣化と対策

写真原板の保存状況

わが国の高温多湿な気候は、写真原板、特に写真フィルムを長期に保存するにはあまり適していません。保管場所や方法によっても劣化の度合いには差が出ますが、一般的な家屋や物置は通気の悪い場所が多いため湿気が溜まりやすく、ビネガーシンドロームやカビといった劣化が起こりやすくなります。
原板を保管するネガカバーやケースの材質によっても劣化の度合いや種類は異なってきます。大切なフィルムだからといって、ビニールにくるんだり、お菓子の入っていた缶や箱にしまっておくと、通気性が悪いため、かえって劣化を招いてしまうことがあります。

収納状況
原板収蔵状況-密閉した例
劣化した包材

劣化の状態

もし、以下のような状態になっていたら、劣化が始まっている証拠で、何らかの処置が必要になります。

1、酸っぱい臭いがする。
2、フィルムが丸まっている。
3、ひび割れている。
4、白い粉が出ている。
5、溶けはじめている。
6、粉々に分解している。

1、まででしたら劣化を抑えることは出来ますが、2、以上になると画像を回復させることは困難です。

ビネガーシンドローム

写真フィルムの劣化の中でもっとも多く、今一番問題となっているビネガーシンドロームは、フィルムが高温多湿の密閉された空間に置かれていることによって引き起こされる劣化です。1950年代からフィルムのベース(支持体)に使われた三酢酸セルロース(TAC)が空気中の水分と結びついて分解していく現象で、はじめはフィルムから酢酸臭が出て、しだいにフィルム表面にべとつきや白い粉の析出などが起こります。さらに劣化が進むと、フィルムべースが委縮して波打ってわかめ状になり、画像が溶解し、フィルム自体の崩壊が始まります。

ビネガーシンドロームが一度起こってしまうと、それを完全に止めることはできませんし、劣化によって失われた画像を修復、再現することはできなくなってしまいます。

ビネガーシンドロームにより皺のよったフィルム
ビネガーシンドロームでフィルムベースが縮み、カーリングしたフィルム
ビネガーシンドロームにより画像が融解したフィルム

写真フィルムを長期保存するには

写真フィルムのビネガーシンドロームを避けるには、次のような対策が推奨されています。

1、高温多湿を避ける。
2、通気性を良くするため、定期的に風を通す。
3、ビニールや樹脂製のネガカバーの使用を避ける。
4、包材を無酸性、中性紙製のものに取り換える。

日本写真保存センターでは収集した写真原板は、PAT(写真活性度試験=Photographic Activity Test)という写真の長期保存のための国際標準をパスした素材の包材に入れ替え、10℃40%RHの温湿度が24時間保たれている、東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館フィルム収蔵庫へ収蔵しています。