写真原板の特性
写真原板の資料としての大きな特徴は、数量が膨大で、写真家ごとに保存の形が異なる、多様な形の資料群であることでした。平均的なプロ写真家が生涯で撮影する写真原板は、135フィルム(35mmフィルム)のフィルムホルダー(ネガカバー)では、平均約2万本以上、コマ数にして72万コマ以上で、複数の撮影者の写真原板を収集すると資料の総数は膨大なものとなります。
デジタルデータベース化の重要性
写真フィルムやガラス乾板などの写真原板は、数が膨大であることに加え、取り扱いに注意が必要なため、本格的な調査にはデジタルデータベース化が欠かせません。デジタルデータベース化により、写真原板に直接手を触れることなく、短時間で膨大な量の写真原板の調査が可能となります。
写真原板データベースの構造と主な入力項目
センターでは、写真原板資料の整理・管理のため、情報を、
・写真家 写真を撮影した主体
・ホルダー 135フィルムの場合、1本36コマ分
・コマ 撮影された個々の写真
の3つの階層に分けてIDを付与し、情報を入力しています。
写真家、ホルダー、コマ、それぞれの主な入力項目は、以下の通りです。
・写真家
氏名、性別、生没年、出生地、略歴・代表作、権利者情報、写真原板資料の来歴
・ホルダー
撮影年月日、撮影場所、フィルム情報(規格、メーカー、種別、コマ数)ホルダーに手書きされていた内容、劣化状態
・コマ
タイトル、撮影年月日、撮影地、掲載媒体(雑誌、写真集など)情報・掲載ページ数
画像情報のデジタル化
写真原板は、1本のホルダーに含まれるコマ画像が一覧できるように、コンタクトプリント(密着、ベタ焼き)のような形でスキャンし、データはTIFF形式とJPEG形式で保存しています。スキャン解像度は、モニタ上で撮影対象を確認できるレベルを想定し、取得しています。たとえば、収集原板の中で最も数が多い135フィルムの場合、撮影対象を確認するためには、一コマの長辺が1000ピクセル以上必要なため、解像度800dpiでスキャンを行っています。
また、写真家によるメモやトリミング指示などの付随情報を記録するため、フィルムホルダーの画像データも同様にスキャンしています。
コンタクト画像について
コンタクト画像からは、写真原板が撮影された順番や、写真家の意図だけでなく、写真原板に入れられた印やフィルムの種別など、様々な情報を読み取る事ができます。これら、写真の「画面外」の情報も、写真原板の調査には非常に重要です。